■事業の概要
◆NPO法人「中部リサイクル運動市民の会」
世界規模で深刻な問題となっている地球環境問題やリサイクルに目を向け、1980年10月、「中部リサイクル運動市民の会」を設立。不用品情報誌「月刊リサイクル」の発行や、家庭から出る資源の回収、エコ商品の開発・普及など、地域に暮らす一人ひとりが自主的に参加できる「地域循環型市民社会」の実現を目指す。なお2005年3月〜9月に開幕した『愛・地球博』では、世界共通のアイコンを用い、市民が自ら調べて作る地域の環境情報地図「グリーンマップ」の展示や、人と地球にやさしい環境通貨「EXPOエコマネー」事業を実施。閉幕後も名古屋市金山地区に「EXPOエコマネーセンター」を設置・運営中。


萩原さんはどんな10代を過ごしてきたのですか?

高校まで何の「不安」も「不満」もなかったな。ごく普通の家庭に一人っ子として生まれて、経済的にも何不自由なく育てられてきたから。おかげで高校生を4年もやっちゃったけど(笑)。おまけに大学は「みんなが行くから、じゃあオレも」という理由で、行く『意味』なんて考えもしなかった。だけど大学に入学してしばらくたった頃、ある女性と出会い、恋をした。彼女を好きになり、どんどん知るうちに、彼女が将来のことまでしっかり考えていることにカルチャーショックを受けたんだ。「牧場で働いて牛を飼って…」と、ささやかで彼女らしい夢だったけど、自分は夢ひとつ持っていない。「自分は一体何が好きで、この先何がしたくて、どんな風に生きたいのか」。それ以来、ほとんど大学の講義には出ず、学園祭の実行委員会に入って企画や運営に明け暮れるようになった。自分が何を楽しいと感じ、どんなことに興味があるのか、この時から「自分」について、意識して考えるようになったと思う。

何がきっかけでリサイクルの世界に興味を持ったのですか?

きっかけは27歳の時。それまでは「地球環境」とか「リサイクル」なんて興味どころか言葉すら聞いたこともなかった。22歳で大学を中退してからも、教材のセールスから路上でのアクセサリー販売、建築設計の雑誌制作と、今の活動とはまったく無関係の仕事をしていたし、趣味もストリートパフォーマンスだったし(笑)。ちょうど雑誌制作の仕事を始めて3年たった頃だったかな、サラリーマンの傍らやっていたストリートパフォーマンスの仲間から、歌舞伎と演劇を組み合わせた「ロック歌舞伎」を立ち上げようという話が持ち上がったんだ。活動は楽しかったし、のんびり「ロック歌舞伎」をしながら過ごすのもいいなって。特に会社に不満もなかったから、「退職します」って伝えたんだ。そうしたらその途端、話は立ち消えに…。この時がちょうど27歳だった。職も楽しみも失い、ぼんやりと次の仕事を考えながら車に乗っていると、ラジオからリサイクル運動を行うサークルからの活動内容が流れてきた。普段なら聞き流してしまうような内容のはずなのに、なぜかその時は「ピン!」ときたんだ。無意識に電話番号を書き留めて、その日のうちに即電話。団体のある大阪まで会いに行っていた。これまで1度も環境問題や市民運動なんて興味を持ったことなかったのに…。あの日あの時、何かが自分の心の中に隠れていた“アンテナ”に引っ掛かったんだ。まさかこのラジオが、人生のターニングポイントになるとはね。

リサイクルや環境問題に興味がなかった萩原さんが、
何故「中部リサイクル運動市民の会」を始めることに?

ラジオを聞いて会いに行ったリサイクル団体のメンバーは、10代後半から20代前半が中心で、大阪以外に東京でも活動。自分にはリサイクルに関する知識も経験もなかったけど、若い彼らのパワーを目の当たりにして、「自分にもできる」と、なぜかそう思った。それに以前勤めていた会社では、雑誌の編集以外に設計も行っていて、一応大学時代に図面の引き方を習ったものの、仕事として認められるほどの実力はなかった。きっと劣等感を持っていたんだね。だからこそ、次は絶対に自分の好きなことを仕事にしたい。これが「自分の仕事だ」と言えることをしたい。同じ人生の大事な時間を切り裂くなら、楽しいことをして過ごした方がいいじゃないか。これからの時間は自分の気持ちに正直に進もうと固く決心して、1980年10月、「中部リサイクル運動市民の会」を発足。たったひとりからのスタートだった。

発足から25年。
活動を始めて良かったなと思うことや感動したことは?

発足当初はまず、「家庭でも一人からでもできる楽しい活動」をコンセプトに、ガレージセールの開催や、フリーマーケットなどを告知した不用品情報誌「月刊リサイクルニュース」を制作・販売。新聞社にも手紙を出し、活動を広報すると、自分の思いに賛同する人が50人も集まってくれた。こうして発足から10年は、彼らとともに「リサイクル」という言葉を広める期間として空き缶回収キャンペーンなどといった、イベントの開催を中心に活動してきた。1990年代はさらにリサイクル活動を拡大、新聞古紙100%の紙を作るなど、リサイクル活動を「形」にした10年だった。そして、「中部リサイクル運動市民の会」にとっても自分にとっても大きな一歩となったのが、2005年に開催された『愛・地球博』。万博内にある「地球市民村」に参加し、さまざまな活動に取り組んだ中でも、「EXPOエコマネー」の反響の大きさには、本当に驚いた。これは、例えばスーパーなどでレジ袋を断るとEXPOエコマネー(シール)がもらえ、たまるとエコ商品などと交換できるというシステムで、期間中、来場者の約60万人がこの活動に共感し参加してくれた。その結果、万博閉幕後も事業が1年延長されることになり、「ゴミを減らすのではなく、ゴミを減らす人を作りたい」という、さらなる目標実現に向けての自信につながった。街は知識や法律だけでは変わらない。「自分たちの町は自分たちで作る」という思いを持つ市民を作ることこそが大切なんだ。「NPOの生産物は人である」という言葉がありますが、今後は自分や家族のことを大切に思うように、環境問題も身近に感じられる人々を作る活動に取り組みたいね。

中・高校生にメッセージをお願いします。

「嫌になったらやめる」と言いながら25年。まさかこんなに長く続くとは、自分でも驚いています(笑)。こうしてゼロから始めて1つ確信したことは、「人に能力の差はない」ということ。やるかやらないか、ただそれだけ。必要なのは、自分が辿り着きたい目標をきちんと置いてスタートラインに立ち、一歩踏み込んで出すかどうかなんだ。
かつて名古屋は「ゴミの回収もできないだらしない街だ」と言われていたけど、今やゴミを細かく分別・回収できるようになり、環境に対する意識や興味を持つ市民が増えてきた。これは人々が「自分にもできるんだ」と、実感できたからだと思う。ほんの少しでも自信になれば、人は何だってできる。確かに同じ物事を行うのに、1日でできる人もいれば、10年かかる人もいる。けれど、やり遂げたいという意志があれば必ずゴールできる。きっかけは「女の子にモテたい!」だっていい。「これがしたい」という目標さえ見つかれば、知識や技術なんて後から自然と身に付くもんなんだよ。この25年、自分がそうだったからね。
みんなにはこの先、自分の好きなことや、やりたいことをして生きていって欲しい。周りに共感されるまでには時間はかかるだろうけど、本当に好きなことであれば続けられるし、必ず認められる。でも、やりたいことが見つかったら何よりも「好きだ」という気持ちを強く持って自分を信じること、これがイチバンだと思うよ。



■プロフィール

NPO法人「中部リサイクル運動市民の会」代表理事
萩原喜之さん

1953年静岡県生まれ。大学進学を機に名古屋へ。27歳の時、3年勤めた会社を退職して、新たな仕事を探している最中に、リサイクル活動を行う団体を知り、誰でも参加できるリサイクルシステムと場作りを目指し、1980年、「中部リサイクル運動市民の会 」を発足。現在、名古屋市内39カ所にて資源回収所「リサイクルステーション」の設置やフリーマーケットの運営をはじめ、エコ商品の開発、リサイクル情報をまとめた冊子の制作、市民参加型リサイクル事業「EXPOエコマネー」など、さまざまな環境活動に取り組んでいる。

▼0歳
静岡県出身。一人っ子として育つ
▼19歳
大学進学で名古屋へ。大学では交通機械工学を専攻する一方、学園祭の実行委員会に入り、企画・運営活動に明け暮れる
▼22歳
大学中退。就職活動中の友人について行った会社説明会でスカウトされ、学習教材のセールスの仕事に。しかし1年後に退職
▼23歳
退職後、舞台照明のアルバイトと、アクセサリーの制作・路上販売の仕事に就く
▼24歳
建築・設計関連の雑誌制作の仕事に3年間携わる
▼27歳
求職中、リサイクル活動を行う団体に出会い、みずから1980年10月、「中部リサイクル運動市民の会 」を発足
▼32歳
不用品情報誌『月刊リサイクルニュース』の発行で、第1回NTTタウン誌大賞を受賞
▼現在
団体の代表理事として、名古屋市を中心にリサイクル運動推進の先頭に立ち活動中

■インタビューの感想

柳瀬智弘くん
南山高校男子部2年

まだリサイクルという言葉が世の中に出回っていない時代に、不用品情報誌の製作・発行を手掛けていたりエコ商品の開発・普及をしたり、さまざまな活動を始めていたことに驚きました。 自分も学校での生徒会活動などを通してこういった活動に積極的に取り組みたいと思いました。

太田辰範くん
名古屋高校3年

準備中です。

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中高生のための「社会起業家ナビ」は、2005年度「JT青少年育成に関するNPO助成事業」の支援を受け、NPO法人アスクネットが制作しました。