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元製薬会社技術情報担当と中国の国立歌舞団女優のコンビ

「君たち、いくつまで生きたいの?70歳?80歳?いやいや、いまの君たちの食生活を続けると、寿命は50歳ってところなんだよ」

西川修さんの「中国薬膳」講座は、こんな言葉から始まる。本場の烏龍茶、中国製のお菓子はおかわり自由。今まで聞いたことがない健康についての話と、わかりやすいたとえ話、なめらかな話し口調などに聴く側もいつのまにか引き込まれている。市民から中学生・高校生まで人気が高い講座だ。

西川さんが話す内容は、すべて中国医学(日本の漢方の源)に基づいている。彼が中国医学を学ぶきっかけは、何雲(カウン)さんとの出会いだった。

カウンさんは、中国・遼寧省出身の元・女優である。幼少の頃から少年芸術宮に入団し、選抜されて20代後半まで歌舞団の舞台女優として活躍。有名な舞台俳優だったため、今も鞍山市の中日特使に任命されており、年1回の国際フェスティバルには招待されるという。30代以降は舞台助監督など制作側に立っていたが、日本人の母を慕って日本で暮らし始める。しかし、最初はカルチャーショックの連続だったという。

「中国人は生きるために働く。だから会社が終われば、たくさんの友達と会ったり、仕事を忘れて生活を楽しむ。会社以外の”社会”をいっぱい持ってる。でも、日本人は働くために生きている。会社や学校だけしかないから、開放感や心の余裕がない。いつも早く、早く、ってせかされて。早くすればするほど、早く死ぬだけじゃない?(笑)」

 そんな日本で中国人の自分に何ができるのか?「気功」は、カウンさんが中国人として自然に学んできたものだった。それを学び直して、日本で教えたいと思い始めた。

[取材・文 平田 節子]

 
     
     
 

中国政府の招聘状をもらって渡中、中国医師界に入る

カウンさんが語る中国人の健康についての考え方、気功というものが西川さんには新鮮な驚きだった。西川さんは若い頃、大阪の公立衛生研究所で食品の添加物の研究をし、その後は製薬会社で薬の営業をしてきた。そのかたわら、医学知識をかわれて、鍼灸学校などで講師のアルバイトも。いま考えると、健康を金に換えてきた商売だった、と思う。

「それまでは健康をビジネスとして扱ってきてたんですね。でも本当の健康は金で売ったり、買ったりしてはいけないもの。そう気づいた時に、本場中国で医学を勉強して日本に正しい健康についての知識を伝えようと決めたんです。今まで健康について間違った考え方で、社会に関わってきた罪ほろぼしのような感覚でしょうか。会社を退職し、中国へ伝統医学を学びに行ったんですよ」

いまから8年前のことである。カウンさんとふたりで3年間、中国で勉強。それまでの医療活動なども評価され、ふたりとも中国医師として認められた。しかし、日本では中国医学は正規の医療と認められず、民間療法の一種とした扱いとなってしまうため、国内でこの免許を使っての病気治療はできない。(ドイツなどの西欧諸国では中国医学も正規の医学として認められ、病院にも専門科があったり、気功治療に際しては健康保険も適応される。)

現在は、病院併設の健康センターの健康講座やカルチャーセンターを中心に、西川さんは薬膳を、カウンさんは医療気功を教えている。

次世代を担う若者に健康の大切さを伝えたい

高校生・中学生などを対象とした学校での市民講座などは、ほとんどボランティアであるが、おふたりは時間が許す限り参加する。カウンさんは語る。

「日本の若者は、勉強とゲームで睡眠不足、自然と接触して大地の気をもらうこともない。アジア人なのに、食生活も急激に洋食化が進んでいる。若者の健康の質は、国の質。今の子たちが大きくなった時、30年後が怖いんです。だから、いま本当に大切な健康のことを教えてあげたい」

日本に気功と言われるものがすでにいろいろあるが、本物が少ない。正しい気功が普及しないと、結果的に気功の効果が疑われるようになる。だからこそ、機会あるごとに5000年の歴史の中で磨かれてきた中国医学の確かな情報を、伝えていきたいのだ。

「日本は今『情報加重』。わかりますか?同じ情報ばかりが、テレビでも雑誌でも扱われて、ホントのさまざまな情報が入ってこない。私達は『情報過多』にしてあげて、自分で情報を選ぶチカラをつけてほしいんです。たとえば『経絡(ケイラク)』と呼ばれる気の幹線を通って全身を流れている気ですが、本当は質量を持った物質で、訓練すると見えるようになるんですよ。知らない人にとっては、驚くような話だと思いますけどね(笑)」

60歳を過ぎてからは、おまけの人生だから恩返しに使いたい、と笑う西川さん。本物を学べる楽しさを、子どもたちに伝えたい。

「私達ふたりの座右の銘は、『滴水之恩 涌泉相報』というものなんですが、一滴の水をいただいた方の恩は、海の水のごとくに恩返ししよう、と。私達は8年前に文字通り無一文からはじめて、ここまでこれました。人への感謝の気持ちは、これからも忘れずにいたいですね」

 

 
     

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