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1948年10月14日生まれ。生後まもなく預けられた福祉施設で四歳まで過ごし、その後養父母に引き取られる。ギャンブル好きの養父と、それに耐えられず家出を繰り返す養母のもと、高校卒業時まで極貧生活を送る。高校卒業後、不動産関連の会社に就職し、25歳の時に不動産業で独立。翌年喫茶店を開業し、それから5年後にCoCo壱番屋の一号店となるカレー専門店を開業。34歳で会社設立、50歳で会長就任。一昨年、53歳の若さで後継者に代表権を譲り、その潔い交代劇はマスコミで話題となった。昨年1月にNPO法人イエローエンジェルを設立。

自分が信じるものを徹底的につらぬき続ける。
ただそれだけでいい。

「高校生活は楽しかったんだよ」と彼は満面の笑みで語る。
黄色い看板で誰もが知っているCoCo壱番屋の創業者である。

生後まもなく養護施設にあずけられ、ギャンブル好きの養父のもと苦労して育った。
家賃未払いのために、十数回の転居をし、高校1年生まで電気のないローソク生活。
誰もがそんな生活をしていた時代ではない。
高校時代は朝5時に起き、6時半から7時半まで豆腐屋でアルバイトをしてバレー部で朝練習をし、放課後はまたバレー部で練習。友人と共に過ごす、ただそれが楽しかった。

自分を不幸だと思ったことはない。他人と自分を比べて、自分の環境を呪ったことはない。ビジネスをはじめてからも「みんなこうしているから」という当たり前の戦略を一切とってこなかった。かたくななほど、自分の信念を貫き、お客様のためを実践した。

最初の喫茶店を開いてから28年間、後継者に社長を譲る前日まで朝5時から夜11時過ぎまで働き、夜の繁華街にも映画館にも一切足を踏み入れることもなく遊ぶこともなく、成功した経営者としては『変人』であった。

そしてビジネスの第一線を退いた今、夢を持って頑張っている人達を応援するための
活動で忙しい日々を送る。そんな彼が人生を通して学んできたものを中・高校生のために語る。

「なぜそんなに苦労しているのに、笑顔なのか?」

キミにはそんな疑問が残るかもしれない。それでいい。

人は誰しもその気になれば、自分を貫く強さが持てる。
人にはそんな強さがあるのだと、キミに感じに来てほしい。

恵まれない境遇だったけれど、
自分が不幸だと思ったことはなかった。

天涯孤独な孤児として、四歳の時に福祉施設から養父母にひきとられる。しかし養父はギャンブルにお金を注ぎ込んでしまう人で、養母も耐えきれずに家出。高校1年生の時に養父が亡くなり、養母とふたりで暮らすまでは食べるだけで精一杯の毎日が続いた。

今思うと、すごい生活ですよ。家賃を払えなくて十数回転居してね。ボロアパートにしか住めないんだけれど、両隣の家までは電気が来ていても、ウチだけローソク生活。

ホントは高校も行かないつもりだったんですけどね。貧乏してても貧乏に見せていなかったから、先生が高校に行くものだと思いこんで、半分間違って高校に入ってしまったんです。毎朝6時半から7時半まで豆腐屋でアルバイトをして、こづかいから学費や食費まで自分のことは全部バイト料でまかなっていました。

それでも高校生活は楽しくてね。電車がストでうごかない時も、西区から小牧まで自転車に乗ってクラブだけやりに行ったりね。弱いバレーチームだったけれど、好きなことやって、友達がいて、どろんこになって、くだらないことしゃべって…。

他人や友人と自分を比べて、わたしは不幸だ、と思ったりすることは一度も無かったんですよ。

そんな苦労をしても父親が大好きだったし。小学校に上がる頃かな、パチンコ屋さんに行くのが好きでね。近くの店に行って落ちているシケモクを拾って、父親に持って帰る。たくさん拾えると誉めてもらえるんです。それが、うれしくてね。

私の場合は生まれたその日、1948年10月14日が、生涯で一番の逆境だったと思うんですよ。詳しい事情はわかりませんが、多分だれも祝福してくれなかったんだろうから。

それを知ったのは高校生になってからです。ある日、学校から戸籍謄本を持ってきなさいと言われたんです。自分で区役所に行って、書類を見てびっくり。誕生日と名前が違い、おまけにもらいっ子でした。重大な三つの発見。そんなことありえないですよね。

ずっと「モトハル」という名前で呼ばれていたんですが、本当は「徳二」という名前だった。ギャンブルするのに縁起が悪いからと、父親が変えたそうなんです。

でもね、ショックなんてあまり感じなかった。そんな余裕もなかったんでしょうか。むかし叱られた時に「お前はもらってきてやったんだ」と言われていたけど、あれは本当だったんだなぁ、と漠然と思ったり。親を捜そうとも思わなかった。

あるがままをうけとめる…。

ある意味で、高校卒業するまでに他の人が一生かかってする以上の経験をしてきました。自分で望んだわけじゃないですけれど、ずいぶん鍛えられた。耐えること、人に迷惑をかけないこと、人に喜んでもらうこと…。それがその後の人生に影響している部分はあると思います。

本気で夢に向かっていき、その目標を達成した瞬間、
つらい過去はぜんぶいい思い出になる。

高校卒業後、不動産会社に就職し25歳で独立。翌年、夫婦で喫茶店を開業し、それから5年後にCoCo壱番屋の一号店となるカレー専門店を開業。今では全国で1000店近い店舗を持つチェーン店に育てる。

一昨年、53歳の若さで後継者に代表権を譲り、その潔い交代劇はマスコミで話題となった。昨年1月にNPO法人イエローエンジェルを設立。現在は年に100回の講演と、NPOを通して夢を追いかける人達の支援活動を行っている。


喫茶店は素人の発想を大切にしながら、始めました。業界の慣例や常識にとらわれないで、全部自分で考えて。

「この辺りの喫茶店なら、モーニングサービスをつけないと絶対ダメだ」

と言われながら、ウチはつけなかった。感謝の気持ちがあふれた明るい店にしよう。モノや値段のサービスはしない店にしよう、と決めていましたから。

僕が25歳と妻が24歳、それもズブの素人で生意気ですよね。おつまみのピーナッツでさえ一皿30円で売っていましたから。徹底してましたね。

だから最初は苦労もしました。でもそれが良かった。商売でも人生でも、心と中身が一番です。本気で頑張ればいいんです。すると、ひとりで来たお客様が、次には友達や家族と来てくれる。そんな反応が伝わってくるから、毎日が楽しくなる。

でもね、喫茶店をはじめてから生活は180度変わりました。毎朝5時に起きて妻とふたりで店に行き、疲れ果てて家に帰る、の繰り返し。家に帰って妻とふたりで泣いたこともあります。

「もうこんなツライこと続けられない」

でも次の日も5時に起きて、6時前には店で開店準備を始めて…。本気で頑張るっていうのは、そういうことなんです。

だから喫茶店開業から後継者に社長を譲るまでの28年間、映画もスナックもクラブも一度も行ったことがありません。カラオケだって、オーナーさん達と食事会をした後に2度だけ。周りにはそんな社長は誰もいなかったけれど、わたしは私流の経営を貫いた。

わたしの場合、こだわりが強いんですよ。

数年前ハンバーガーや牛丼が相次いで値下げをした時も、ウチだけは値下げしなかった。値下げなんて私にとっては、恥ずかしいこと。創業以来の思いを貫いたわけです。

早起きし続けたのも、同じ。家を遅くとも4時15分に出て、会社で23時過ぎまで仕事。毎日1000通来るお客様アンケートは、全部目を通す。最後の代表権を譲る日の到着分まで、全部目を通しました。その日の23時半頃までかかって読み終わった時に「あぁこれで経営者の仕事は終わったな」と。

本気でやれないならやらない方がいい。

「本気です」
って建前だけで言ってはみても、気楽な人も多いよね。飲みにも行きたい、友達も欲しい、旅行にも行きたい…。けれど、経営者になる、リーダーになるってことは、自分のことは二の次っていう生き方をすることなんだと、わたしは思っています。そうすることでお客様の期待に応えていくことが、いずれは自分のためになることだから。

わたしがゼロからここまでこれたのは、その本気度が人より高かっただけなんです。

最初の店を出した時には、2号店を出すのが目標。2号店を出した後は、3号店を出すのが目標。つねに目先の目標を本気で追いかけていました。幻みたいなつかみどころがない大きな夢は必要なかった。幻は本気では追えないからね。

大きな目標だけあっても、それは夢とは言えないかもしれない。始まりはまず一歩からだから。ちょっときっかけを作ってみて、これなら頑張れるぞと本気になってみる。その繰り返しでいい。一歩一歩なんですよ。

今思い出すと、過去はすべてハッピーな思い出。だからこれからは、社会への恩返しの時間なんです。頑張っている人達を応援することに時間とお金を使いたい。

人生でも経営でも、その時にはつらいことの連続に思えても、目標を達成した瞬間に、ぜんぶいい思い出になるんです。達成した時に、すべてが必ず解決する。だから目標や夢を持つことは大切なんです。未来がひらけるだけでなく、すべての過去を幸せなものに変えてくれるから。小さな夢をひとつひとつ達成して、大きな夢に進んでいってください。

[取材・文 平田 節子/写真 山田 亘]

宗次徳二さん講演
「経営も人生も真心が一番」

入場無料

とき・ところ
7月18日 (日) 14:30〜16:10
愛知中学・高校にて

問い合わせ先
サマーセミナー実行委員会
TEL.052-881-4346
[email protected]

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