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1980年10月7日生まれ。高校入学と同時にシンセサイザーの音響合成などを独学し、趣味とする。高校卒業後、岐阜県の国際情報科学芸術アカデミーに進学し、卒業制作で "streetscape" を完成。発表当時から注目を浴び、数々の世界的なアートイベントの招待を受け、2002年NHKデジタルスタジアムで「デジスタアウォード(年間最優秀賞)」を受賞。今年4月に友人と起業し、webデザイナーとしても活躍。同朋高校、弥富高校、愛知中・高校、「s-ch.001」のwebサイトは彼が手がけたもの。

真っ白な地図から響く街の音。
独創性の高さで世界から評価を受ける。

真っ白な四角い板の上に、いくつかの線だけが引かれている。どうやらそれは地図のようである。線があるとたどってみたくなるのは、人の本能のようなものだろうか、置いてあるペンでなぞってみる。

すると突然、どこかで聞いたことのある街の音が聞こえてくる。人々の喧噪、走り去る自動車の音、あっ今自転車が通り過ぎた…。これはある街の地図なのだ。それも目で見るのではなく、耳で感じる地図。立ち止まったり、300メートルを1秒で移動したりしながら街を味わう。

これが中居伊織さんの作品「streetscape(ストリートスケープ)」。彼が20歳でつくったこの作品は、2002年のNHKデジタルスタジアム・年間最優秀賞(デジスタアウォード)ほか、国内外のコンテストで受賞。世界20都市で制作・展示を行い、オリジナリティあふれる作品として世界的な評価を得ている。

世界で5万人が彼の作品を体験した。

「『地図なぞって音が聴こえたら面白いかな?』と作ってみたら、知らないうちにお祭り騒ぎが始まっていた…、そんな感じ。もともと小難しい芸術作品を作るつもりはなかったんです。ストリートスケープが楽しんでもらえるなら、これを商品化してもっと多くの人に触ってもらいたい。僕が何かをどうしても表現したいわけじゃないし、みんなが楽しめるモノや時間を作ることができたらそれでいい。それが僕にとっての一番の喜びだし、それが僕らしいやり方だと思う」。

「なんで僕は、周りの人と同じでは満足できんのかなぁ?」

幼い頃から周りと一緒がイヤだった。
みんなは周りの人と同じコトをしたがるのに、自分だけはそう思えない。それがなぜなのか?幼い彼にはわからなかった。ただ、いつも「自分」を意識していた。周りに流されるのではなく、自分らしくいたいと思っていた。本当は何が自分らしいかなんて、わからなかったけれど…。

第一希望の高校に落ちて通い出した高校では、部活にも所属せず、すぐに帰宅。学年で1ケタの優等生となり、確かに周りの生徒とは違った存在となる。しかし今度は「優等生」というひとくくりに入れられるのがイヤになった。

2年生になるとすべてのテストを白紙で提出し、非常階段でタバコを吸ってみる。しかし「不良」仲間には入りたくない。どこにいても、何をやっていても居心地が悪い。付き合い始めた彼女に「出来るくせにやらへんのがムカツク」と言われて「生徒会長」として活躍をするが、一方で髪を真っ白に染めたりもした。

「僕は僕でありたい、といつも思っていたのに、それをどう表現していいのかわからなかった。優等生らしく、会長らしく、高校生らしく…、そういうモノに全部反抗してた」。

ところが高校卒業後に入学した、国際情報科学芸術アカデミーで、彼は急に大人の集団の中に入ってしまった。そこはすでに他の学校で学んだり、プロとして活躍する人達が、最先端の情報技術や芸術を学ぶために来る学校。そんな人たちの中で、何も知らないコドモが「カッコつける」ことなんて、できやしなかった。

「何とか一人前に扱ってもらいたくて、やらせてもらえることは全部やった。先生の手伝いとか、友達の作品作りの手伝い、HP作りを覚えたのも他の人から頼まれたからだし…。そうした活動の中で僕は向上していく喜びを知って、人に役立つ面白さを感じた。そして何よりも、僕のモノの見方とか発想そのものが『中居伊織オリジナル』なんだ!と気づいたんです」。

「どんな肩書きで呼ばれたって構わない。僕は僕であればいいから」

ずっと探してた自分らしさとは、『なぜ僕は人と一緒だと満足できないんだろう』と考えつづけ、変化しつづけてきた自分自身にあったのだ。ずっと感じていた居心地の悪さそのものが、自分らしさだった。

自分の強みやポジションが見えてきて、初めて本当の意味で自分に自信が持てるようになってきた。ストリートスケープというオリジナル作品が認められたことで、その自信はまた強くなった。しかし周りが与えた「アーティスト」という肩書きを裏切るようにして、彼は今年4月に友人達と起業しビジネスの世界に入る。

「だから僕はどんな肩書きで呼ばれたっていいんです。僕が僕であるためには、肩書きなんて必要ないんじゃないかな。『中居伊織』であれば十分。僕なりの視点やら発想で、たくさんの人が求めることを見つけて創り出していきたい。それで周りから思われている『イオリらしさ』をいい意味で裏切って、僕は変わり続けたい。…この先、自分がどんなことをやっているのか自分にもわからない。自分がどんな風に変わっていけるのか、自分自身がメッチャ楽しみなんですよ」。

[取材・文 平田 節子/写真 山田 亘]

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